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誤嚥性肺炎について

肺炎予防と口腔ケア

厚生労働省の統計によると、日本人の死因順位に異変が起こっています。1位はがん、2位が心疾患、そして3位が、これまでの脳血管疾患から肺炎になったのです。肺炎が三大死因の1つになったのは、感染症対策が遅れていた1951年以来60年ぶりということ。ここで注目すべき点は肺炎では高齢者ほど死亡率が上がり、死亡者の96%が65歳以上ということです。

高齢者の肺炎の7割以上は、細菌を含む唾液や食物が気管や肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎だと言われています。特に寝たきりや脳血管障害、認知症の患者ほどリスクが高くなります。これは、嚥下反射(食べ物を飲み込むときに気道が閉じ、食道が開く)や、気道内に異物が入ったときに激しくせき込んで排除する、せき反射が低下して、細菌が気道を通じて肺に入り込みやしくなるためです。

肺炎は従来、発症場所別に市中肺炎(CAP)と院内肺炎(HAP)の2つのカテゴリーに分けられ、日本呼吸器学会でもそれぞれに対応するガイドラインを作ってきました。しかし、これだけではカバーしきれない新しいカテゴリーとして医療・介護関連肺炎(NHCAP)を2011年に定めています。
医療・介護関連肺炎は、次の4つのいずれかに該当する人が発症した肺炎です。
1.長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神科病棟も含む)
2.90日以内に病院を退院した
3.介護を必要とする(介護の基準:PS3(限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす)以上をめどとする)高齢者・身障者
4.通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬等による治療)を受けている

この予防として注目されているのが口腔ケアです。歯科医師である米山武義氏の調査報告によると、「介護者が日常的な口腔ケアを毎日行い、歯科医師等が週1、2回の専門的な口腔ケアを実施したグループは、しなかったグループと比べ肺炎の発症率が39%、死亡率は約53%低かった」とされています。この調査は、歯科ばかりでなく医療、介護分野でも特に注目を集めています。

日常的口腔ケアと専門的口腔ケアの徹底は、口腔内の病原菌を減らすだけでなく、口腔への刺激により嚥下機能が回復して、食事が進むようになり、栄養状態が改善します。ひいては免疫力が向上して肺炎の予防につながるというのが定説になっています。

特に要介護者が肺炎になると検査や投薬、入院日数が増えるため、1人当たりの医療費が100万円以上かさむと言われています。口腔ケアは、肺炎患者を減らすことで医療費の節減にもつながっているのです。